イベントアプリはもう古い?!-デジタルマップでイベントの体験を変える-【ボールドライト×スプラシア対談】

イベントでは今も「紙による会場マップ」が多く利用されています。

 

もし、これをデジタル化してスマートフォンで利用できるようになったら、イベントはどう変わるでしょうか?実は「デジタルマップ」は便利なだけでなく、参加者のイベント体験や、イベントの形まで変えていく可能性を秘めています。

 

今回は、アプリをダウンロードしなくてもWebブラウザ上で利用できるデジタルマップ「プラチナマップ」を提供しているボールドライト株式会社(Boldright,Inc.)の永久保美香氏と対談を行いました。

 

テーマは「デジタルマップが変える展示会の未来 – プラチナマップで実現するイベントDX ‐」。

 

デジタルマップと、それによって実現する未来のイベントについて考えました。

「イベントアプリをダウンロードしてもらう」のが最適解なのか?

中島
会場マップも含め、イベントをDX化する手法の一つとして「モバイルアプリの導入」があります。

 

参加者のスマートフォンにアプリのアイコンを表示させることでイベントを常に意識させる、いわゆるブランディングの観点や、イベントにおける新規性のアイデア、また様々なデータを取得するための媒介として、モバイルアプリの導入は「主催者」にとって多くのメリットがあります。

 

しかし、本当にモバイルアプリが「参加者」にとって価値のある体験を生み出しているか、意味のあるアプリ利用が実現しているか考えると、疑問が残ります。

アプリのダウンロード率・利用率も、主催者にとって頭の痛い問題です。以前、当社がサポ―トさせて頂いたイベントではモバイルアプリのDL率は一桁%にとどまっていました。アクティブユーザーはさらに絞られます。

 

つまり、1万名が来場するイベントにおいては、ダウンロード率7%,アクティブ利用(ダウンロード後3回以上アプリを開いた方と定義)が20%とすると、アクティブユーザー数は140名です。

 

だからといって「アプリのDL率・利用率の向上のために、プロモーションコストをかけてKPI達成に努める」ということになってしまうと、本来は「手段」であるはずのモバイルアプリが「目的」になってしまう事態を招いてしまいます。

 

なお、ユーザーに「モバイルアプリに求める機能や価値」についてアンケートをとると、必ずと言って良いほど「会場マップ」と「コンテンツの検索」という回答が集まります。イベントの会期前、ユーザーとの接点は主にWEBブラウザ上となりますが、モバイルアプリの利用は会期中が中心となるため、ユーザーはアプリに「マップ」や「検索」という機能を求めるわけです。

 

さらに言うと、ユーザーは「モバイルアプリ自体」ではなく、マップや検索という「機能」を必要としているわけですから、もし「アプリをダウンロードする」という手間をかけずにマップや検索機能を提供できるのならば、そのほうがユーザーにとって価値のあるものとなるのではないでしょうか。

そこで今回、アプリをダウンロードしなくてもWebブラウザ上で利用できるデジタルマップ「プラチナマップ」を提供しているボールドライト株式会社さんに、お声をかけさせて頂いたという経緯になります。

紙のマップとデジタルマップ

紙のマップの限界と問題点

永久保
私たちボールドライト株式会社が提供する「プラチナマップ」は、観光地や商業施設、レジャー施設など、デジタルマップを必要とされているあらゆるシーンで活用頂いています。
展示会やイベントの分野でも、デジタル化による運営の効率化や、来場者の方に新しい体験を提供するなど、大きな変革をもたらすと考えています。

ボールドライト株式会社 永久保美香氏

 

中島
最初に紙のマップの限界と問題点について教えて頂けますか?

 

永久保
これだけスマートフォンが普及している中、いまだに多くのイベントや展示会は紙のマップが主流だと思うのですが、これにはたくさんの課題が存在していると考えています。

まず、紙のマップは掲載できる情報量にどうしても制限があります。ブースが多かったりエリアが広いイベントの情報を一枚の紙面に押し込めると、来場者が必要な情報を見つけるのにすごく時間がかかってしまったり、イベント自体の体験が損なわれてしまう可能性もあると考えています。
さらに、紙のマップですとリアルタイムで情報提供ができません。展示会だとブースの配置が変更されたり、当日新しい情報が追加されたり、来場者にすぐに届けたい情報があっても、それを伝える手段がない。
またもしマップを更新するとなった場合、印刷や廃棄のコスト、環境への配慮という問題も出てきます。

 

プラチナマップとは

中島
では、御社の「プラチナマップ」についてご説明頂けますか。

 

永久保
ボールドライトの「プラチナマップ」は、デジタルマップを基盤とするプラットフォームです。スマートフォン上のWEBブラウザでも動くため、アプリをダウンロードせずにご利用頂けます。
マップを基盤として様々な情報(イベントのコンテンツ情報やブース情報など)を来場者の方に提供でき、来場者は検索・分類機能を使って、必要な情報をすぐに見つけることができます。
ブース数が多いのが展示会の特徴ですが、ズームインした時だけ細かいブース情報を表示するなど、視覚的にも分かりやすく表現できるようになっています

 

中島
新聞紙のように地図を広げなくて済むわけですね。スプラシアの「EXPOLINE」とも連携できるんですか?

 

永久保
はい。「EXPOLINE」と連携する場合は、プラチナマップを画面内に埋め込んで表示したり、リンクの遷移先をプラチナマップにして頂いたりということが考えられます。
また、EXPOLINEの管理画面で展示会主催者がブース情報を更新するとプラチナマップにも反映されるという仕組みを構築することも可能です。EXPLINE上でのお気に入りやブックマークをプラチナマップに連携することもできます。

株式会社スプラシア 中島

 

イベントDXにおけるプラチナマップの役割

①経路の検索

中島
次に、大規模イベントでの具体的な活用シーンについて教えて頂けますか?

 

永久保
まず、プラチナマップは経路の検索が可能で、広い会場内でも迷わず周遊できます。

 

中島
来場者が周辺の目印を確認して、自分でマップ上の近くのスポットを選択するんですよね? 屋内でも現在地を取得できるのでしょうか?

 

永久保
はい、来場者が自分の近くのスポットを出発地として選択していただきます。

GPS連携も可能なのですが、屋内イベントだと高い精度で現在地を把握するのは困難です。また会場に階層があると、階層を判定できないという課題もあります。そのため、会場内に「現在地がわかるQRコード」を複数設置して頂いて、それを読み込めば現在地がマップに表示され、行きたい場所への経路も分かるといった機能を活用いただいています。
また、プラチナマップを採用頂いているとある空港では、ビーコンを設置して屋内でも利用者の現在地を把握する仕組みを構築しました。

SCAJで実際に活用された経路検索画面

 

②スタンプラリー機能を用いた回遊性の向上

永久保
展示会ですと、スタンプラリー機能のみを活用頂くケースも多いです。展示会の主催者はやはり、いかに会場内を回遊させるかというところに重きを置いていることが多い。マップとスタンプラリーの連携ができるというところは強みの一つかなと思います。

 

中島
マップなしでもスタンプラリーができるんですか?

 

永久保
はい。例えば会場内の出展ブースにQRコードを設置し、来場者がそれをカメラで読み取るとスタンプが獲得できる仕組みです。

③リアルタイムデータ分析

永久保
プラチナマップのダッシュボードでは、リアルタイムでマップの利用データ分析を行えるようになっています。
利用者がいつ・どのスポットに注目しているかをマップから分析し、検索ワードやスタンプラリーのスタンプを取得した日時、アンケート情報などを取得することができるので、来場者があまり回遊していない場合は対応策をとるなど、様々な活用が考えられます。

 

中島
さらにEXPOLINEのようなサービスと連携すれば、より細かい、利用者一人一人と紐づいたデータまで取得することができるわけですね。

他に、紙からデジタルのマップに移行することによるメリットはあるでしょうか?

 

永久保
メリットは、イベント運営側の視点で見ると業務の効率化ですね。情報を更新する手間を削減できたり、道案内のオペレーションがなくなったりというところです。
また来場者の方のストレスを減らすだけでなく、スタンプラリーやクーポンなど、そういったものをセットで提供できるというのは、来場者の体験価値の向上にもつながります。

 

中島
これまでイベントアプリの中に押し込んできたような機能が、全部WEBでできてしまうとうことですね。

プラチナマップのダッシュボードイメージ

 

プラチナマップの導入事例

永久保

まず、東京ビッグサイトで開催されたジャパンモビリティショー2023の「TOKYO SUPERCAR DAY」では、デジタルマップ上で1エリアにある複数の出展ブースを回遊するスタンプラリーを実施しました。楽天グループのイベント「Rakuten Optimism」でも、去年と今年、イベントを盛り上げるツールとしてデジタルマップを活用して頂きました。他にもSCAJ、オクトーバーフェストで導入頂いております。

イベントではデジタルマップに加えて「スタンプラリー・クーポン」機能を導入頂くことで、イベントでの体験価値を向上させる試みも実施してきました。

 

中島
変わった使われ方はありましたか?

 

永久保
飲食系のイベントでは、開催直前にメニューが変わったりマップに変更があった時、以前はシールを貼ったりして対応されていたようなのですが、それも今回デジタルマップによって変更が容易になったのではないでしょうか。

 

中島
素晴らしいですね。これからも採用がどんどん増えていきそうです。

伊勢丹新宿店で開催されたSalon de Parfum 2024 における 利用シーン

 

デジタルマップが変えるイベントの未来

中島
プラチナマップについて計画している新機能を教えて頂けますか?

 

永久保
1つは生成AIとの統合です。来場者の「行動予測」に関するところなのですが、取得した様々なデータを活用して、どの時間帯に人が集中するのか、逆にすいている場所や人気の場所などを生成AIで分析できるのではと考えています。

もう1つが、これはイベントや展示会ならではだと思うのですが、来場者の方同士の
リアルタイムな交流を促進する「ソーシャルフィード機能」です。

展示会のブースに対するコメントなど、そういったものがリアルタイムであるとより盛り上がるかなと。すでにいいねとかブックマーク機能はあるのですが、ここからさらにソーシャル性を高めた形で考えています。

 

中島
あまり国内でデジタルマップの導入が進んでいない理由は、何だと思われますか?

 

永久保
観光や商業施設の分野でもそうなのですが、そもそも「マップをデジタルに」という発想がなく、存在を知られていないことが大きいと思います。こちらからご提案させて頂いた時に、実際コストも削減できるし良いところしかないねということを仰って頂けるケースが多いです。

 

中島
デジタルマップ導入後、紙のマップも併用して使い続けるか?という問題もあります。

 

永久保

施設によっては、高齢者やお子様の方をターゲットされていることもあり、デジタルリテラシーが低い方への対応は必要だと思います。
ただ、お子様の場合はご両親がスマートフォンを利用されていると思うので、一概には言えませんね。

 

中島
逆に紙の良さを考えると、一覧性や手軽さだと思うんですが、このあたりプラチナマップではどういう風に工夫されているんですか?

 

永久保
一覧性を補完する機能としては、リスト機能があります。リストの一覧から見たい場所をすぐご覧頂けます。表示の切り替え機能で、マップ全体の表示やエリア選択も可能です。

 

中島
15秒くらいでマップの使い方を説明してくれるチュートリアル動画を入れても良いかもしれませんね。

 

EXPOLINEと連携することで利用者一人一人の興味に合わせて表示するということも実現できそう。エリアAに興味がありそうな人がマップを開いたときは、最初にエリアAが表示されるようにするというようなイメージです。

永久保
エリアの中に入ったときのマップURLと、全体のマップURLは分けられるようになっているので、表示するマップを使い分けることで実現できます。

 

中島
プラチナマップで取得したデータをAPIで外部、たとえばEXPOLINEに送ることは可能ですか?

 

永久保
はい。連携可能です。

 

中島
その送られたデータをどう活用するかが、これからの課題かもしれません。
WEBでこれだけの体験が作れるということ自体、まだまだ知られていないと思うので、ボールドライトさんの力を借りながら我々で未来のイベント体験を作っていきたいです。

 

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