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イベントの成功において、「集客」が重要であることは言うまでもありません。しかし、その本質は、集まった人々の間で新たなビジネス機会を創出することにあります。その土台となるのが、正確で鮮度の高い「来場者情報」です。
しかし、手入力によるフォームでは入力ミスや情報の欠損が頻発し、「集めたデータの多くが活用できない」「イベント後のデータクレンジングに膨大な工数がかかる」といった課題は、多くの主催者を悩ませてきました。
今回、私たちデジタルエクスペリエンスが提供するイベントプラットフォーム「EXPOLINE」は、Sansan株式会社の名刺アプリ「Eight」との連携により、この長年の課題に終止符を打つ画期的なソリューションをリリースしました。
この連携は、イベントDXにどのような革命をもたらすのか。Sansan株式会社で本連携を推進された安藤氏をお招きし、開発の背景からその価値、そして未来の展望まで、弊社代表の中島が詳しくお話を伺いました。
対談者
Sansan株式会社 Eight事業部 安藤 琢哉 氏
デジタルエクスペリエンス株式会社 代表取締役 中島 優太
「出会いからイノベーションを生み出す」Sansanの挑戦
中島
本日はありがとうございます。はじめに、Sansan株式会社およびEight事業部の事業内容についてご紹介いただけますでしょうか。
安藤
はい。Sansan株式会社は「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに、働き方を変えるDXサービスを展開しています。創業事業であるビジネスデータベース「Sansan」は、紙の名刺を正確にデータ化し、全社で活用できるサービスです。名刺に加えて企業情報や営業履歴も一元管理することで、ビジネス機会の最大化を後押しします。
この「イベントでの名刺デジタル化」にも通じる、紙の情報をデータ化するコア技術を応用し、請求書などをデータ化する「Bill One」や契約書をデータ化する「Contract One」といったサービスも生まれています。
中島
まさに、アナログな情報をデジタル資産に変えるプロフェッショナルでいらっしゃいますね。では、個人向けの名刺アプリ「Eight」は、どのような経緯で生まれたのでしょうか。
安藤
法人向けのSansanを推進する中で、「紙の名刺そのものをなくしたい」という創業時の想いをより多くの人に届けるには、個人向けのソリューションが必要だと考えました。そこで、個人が当たり前にデジタルでプロフィールを持ち、それを交換し、つながっていく世界観を目指して生まれたのが「Eight」です。
サービス開始から10年以上が経ち、現在は改めて「紙の名刺文化を変える」という原点に立ち返り、デジタル名刺の利活用を推進してきました。例えばEightアプリをかざすだけで名刺交換が完了したり、非ユーザーにもデジタル名刺を渡せたりする機能に注力しています。
なぜデータ精度が重要なのか?イベント主催者を悩ます”見えないコスト”
中島
今回の連携は「イベントにおける個人情報の精度」という、非常に根深い課題にアプローチするものだと感じています。 私たちが日々イベント主催者様と接する中で、このデータ品質の問題は、想像以上に大きな”見えないコスト”と”機会損失”を生んでいると痛感しています。
例えば、登録されたデータに部署名や役職の表記ゆれがあるのは日常茶飯事です。「マーケティング部」と「Marketing部」、「部長」と「ジェネラルマネージャー」など、単純な名寄せだけでは解決できないケースが多発します。これらを一つ一つ手作業で修正するコストは膨大です。
また、特にBtoBイベントにおいて、Gmailなどの個人アドレスで登録されるケースも少なくありません。これでは所属企業が特定できず、ビジネス用途のデータとしては価値が著しく下がってしまいます。さらに、大企業に多いグループ会社への出向や兼務といった情報は、名刺交換の場でないと把握しづらく、フォーム入力だけでは欠落してしまいがちです。
これらの不正確なデータは、フォローアップの遅れや的確なアプローチの阻害に直結します。せっかくイベントに興味を持ってくれた有望なリードを、みすみす逃してしまっているのです。この課題を解決することは、イベントのROIを最大化する上で避けては通れない道だと考えています。

デジタルエクスペリエンス株式会社 代表取締役 中島
自社イベントでの成功体験が「外部提供」への確信に変わった
中島
私たちも以前からSansan様主催のイベントを「EXPOLINE」で支援させていただいており、その先進的なDXへの取り組みにはいつも感銘を受けていました。特に、イベントでのEight活用は目覚ましいものがありましたね。
安藤
ありがとうございます。自社イベントでは、Eightアカウントでの申し込みから、スマートフォンをかざすだけのスムーズな入場、参加者同士のデジタル名刺交換まで、一気通貫した体験設計を目指してきました。これにより、参加者の方は「名刺切れ」の心配なく、手軽に人脈を広げられ、主催者側も後処理の手間を大幅に削減できるというメリットが生まれています。
中島
今回の連携機能は、その自社イベントで使われていた仕組みを外部のイベントでも利用できるようにしたもの、という理解でよろしいでしょうか。
安藤
実は、今回の「Eightデジタル名刺ログイン」は、自社イベントで使っていたものとは別に、外部提供用として新たに開発した機能なんです。
過去にも「Eightアカウントで何かに登録する」という体験には何度か挑戦したのですが、技術面や体験設計の面で課題がありました。しかし、自社イベントでの成功を通じて、データ連携の仕組みがようやく整い、「これを汎用的な機能として製品化すれば、多くのイベント主催者の課題を解決できるはずだ」という確信に至りました。
この機能は、単にイベントに登録するだけでなく、あらゆるサービスへの登録やエントリーの場面で活用できるものとして構想しており、その第一歩が今回の連携となります。

Sansan株式会社 Eight事業部 安藤 琢哉 氏
タップひとつで、正確な情報が自動入力。感動的な登録体験
中島
それでは、今回の連携でイベント参加者が具体的にどのような体験をするのか、教えていただけますか。
安藤
はい。イベントの申し込みフォームに、PCではQRコード、スマートフォンではボタンの形で「Eightで登録」の導線が設置されます。
<Eightアプリをお持ちの方>
- PCのQRコードをスマートフォンのカメラで読み取るか、スマホのボタンをタップするとEightアプリが起動します。
- 「あなたのこの情報を連携して良いですか?」という確認画面が表示されます。
- 同意すると、即座にイベントフォームに氏名や会社名、役職など、全ての情報が自動で入力された状態になります。
<Eightアプリをお持ちでない方>
- QRコードなどを読み取ると、スマートフォンのカメラが起動します。
- ご自身の紙の名刺を撮影するだけで、その情報が瞬時にデータ化され、フォームに自動で入力されます。
中島
驚くほど簡単ですね。いわゆる「イベントEFO(入力フォーム最適化)」の究極形と言えるかもしれません。 特に、アプリを持っていない方でも、ご自身の名刺を撮るだけで完了する、というのは素晴らしいです。これなら誰でも迷わず、ストレスなく登録できます。ちなみに、名刺を撮影した場合、自動的にEightユーザーとして登録されるのでしょうか?
安藤
いいえ、勝手にユーザー登録されることはありません。あくまで名刺の情報をデータ化してフォーム入力を補助する機能の提供に留めています。もちろん、これを機にEightの利便性を知っていただけたら嬉しいので、主催者様には別途アプリのダウンロードをご案内いただけると大変ありがたいです。
ただのOCRではない。Eight連携だけが提供できる「データの価値」
中島
イベントにおけるフォーム入力の効率化(EFO)には、これまでも様々なアプローチがありました。最近では、名刺をOCR(光学的文字認識)で読み取って入力するサービスも増えてきています。 今回の連携は、それらとどう違うのでしょうか。
安藤
最大の違いは、Eightならではの付加情報が手に入り、データがリッチになることです。
Eightユーザーが登録した場合、名刺に記載された情報に加え、我々のデータと突き合わせた「職種」や「職位」といったセグメント情報、さらには「企業規模」や「法人番号」といった企業情報も主催者様に提供されます。
中島
「法人番号」が手に入るのは非常に大きいですね!イベント後に手作業でデータクレンジングを行い、法人番号を付与している企業は非常に多いです。この作業がリアルタイムで完了するというのは、BtoBマーケティングにおいて絶大な価値を持ちます。
安藤
おっしゃる通りです。法人番号はBtoBマーケティングのボトルネックともいえる部分でしたので、ここは提供することにこだわりました。Eightユーザーでない方の情報についても、会社名などから法人番号を付与してお渡しします。 これにより、イベントで得たリード情報の質が飛躍的に向上し、より迅速で的確なフォローアップが可能になります。
コンバージョンレートが1.4倍に!参加者にも主催者にも嬉しい効果
中島
主催者にとってデータ品質の向上は大きなメリットですが、参加者側の反応はいかがでしょうか。
安藤
あるメディアサイトの会員登録でこの機能を導入したところ、まだ初速のデータではありますが、手入力のフォームに比べてコンバージョンレートが1.4倍になるという目覚ましい結果が出ています。
これは、参加者にとっても「簡単・スピーディ・正確」な登録体験そのものに価値を感じていただけている証左だと考えています。
中島
主催者にとっては「質の高いデータ」が手に入り、参加者にとっては「手間なく登録できる」。まさにWin-Winの関係ですね。この体験価値の高さが、結果的に登録者数の増加、つまり集客力の向上にも直結するわけですね。
イベントだけに留まらない。「デジタル名刺が社会のインフラになる」未来へ
中島
最後に、今回の連携を踏まえた今後の展望についてお聞かせください。
安藤
まず「デジタル名刺ログイン」という機能自体で言えば、世の中のあらゆるビジネス情報登録フォームに導入していただくのが最終的な目標です。デジタル名刺を差し出すことで、あらゆるサービスにログインし、申し込みが完了する。そんな世界を実現したいと考えています。
イベント領域に特化した話で言えば、今後は集客ソリューションとの連携も考えられます。例えば、Eightのデータを活用してイベントのターゲット層に的確にアプローチし、この機能でスムーズに登録してもらう、といったシナジーです。
また、イベントで大量に交換した名刺を即座にデータ化し、チームで共有して営業活動に活かせる法人向けサービス「Eight Team」と組み合わせるなど、提供できる価値はまだまだあります。出展社、来場者、主催者の三方良しとなるようなパッケージを、今後も開発していきたいです。
中島
EXPOLINEをご利用の主催者様の中には、自社でメディアを運営されている方も多くいらっしゃいます。そういった企業様にとっては、イベントだけでなくメディアの会員登録などにも活用できる、非常に親和性の高いソリューションですね。
今回の取り組みを皮切りに、私たちもイベント主催者様が抱える本質的な課題解決に向けて、さらに踏み込んだご提案ができると確信しています。まずはこの新しい参加登録の形を、多くのイベントで体感していただきたいですね。
本日は、イベントDXの未来を大きく変える可能性を秘めた、大変興味深いお話をありがとうございました。
※~ Eight連携に関するNews記事を公開いたしました ~※
イベントDXプラットフォーム「EXPOLINE」と名刺アプリ「Eight」が連携開始