国内最大級のBtoBイベントとして、IT業界のみならず多くの企業から注目を集める株式会社大塚商会様の「実践ソリューションフェア2026」。東京・大阪で合計1万名を超える来場者を迎えるこの巨大プロジェクトは、今、大きな変革の時を迎えています。
長年、現場を支えてきた独自システムの保守期限(EOS)という課題を背景に、同社が選択したのは「2段階の戦略的導入」でした。まずは2025年10月の営業部主催の地域イベントをファーストステップとして新システム「EXPOLINE(エキスポライン)」の実装・運用を完遂。そこで得た手応えとデータを武器に、2026年2月の「大本番」である実践ソリューションフェアに向けてさらなるブラッシュアップを進めています。
「まさにいばらの道でした。ですが、その先に光が見えた。」
異動直後にこの巨大プロジェクトの舵取りを任された大塚氏と、現場で運用を支える佐野氏。そして伴走した弊社村田を交え、システム刷新という名の「挑戦の記録」と「これからの展望」を語り尽くしていただきました。
企業・担当者紹介
■クライアント:株式会社大塚商会
IT機器やソフトウェア、サービスの提供を通じて、お客様のビジネスをトータルにサポートする日本を代表するソリューションプロバイダー。
■ご担当者様(以下、敬称略):
大塚 祐 氏(MMプラットフォーム部イベント企画1課 課長)
佐野 歩美 氏(MMプラットフォーム部イベント企画2課)
■システム提供:弊社イベントDXユニット(村田)
イベントの来場管理、受付システム「EXPOLINE」を提供。大塚商会様独自システムとの高度なデータ連携(25種)と、大規模来場者のリアルタイム管理を実現しました。
1万名を超える規模の「大本番」を見据えた、2段階の導入戦略
― 今回のプロジェクトは、2025年10月の営業部主催の地域イベントでの初実装を経て、いよいよ2026年2月の1万名規模の「実践ソリューションフェア」へと向かう、非常に戦略的なステップを踏まれていますね。改めて、この2つのイベントの位置づけについて教えてください。
大塚: そうですね。大前提として、弊社のイベントは「お客様に最新のビジネスのヒントを持ち帰っていただく」という非常に重要な社会的ミッションを帯びています。中でも2月に開催する「実践ソリューションフェア」は、1月から始まる新期のスタートダッシュを飾る、まさに弊社にとって最大のフラッグシップイベントです。
― 1万名超が来場するイベントとなると、システムへの負荷も運用コストも桁違いになります。
大塚: おっしゃる通りです。だからこそ、いきなり2月に全機能をぶっつけ本番で入れるのではなく、まずは10月のイベントをファーストステップとして位置づけました。ここでシステムの実装から会期実施までを経験し、そこで出た課題を解決した上で、2月の大本番を迎える。この2段階のステップが、DXを成功させるための必須条件でした。
佐野: 10月の時点でも相当な熱量でしたが、あくまで通過点。今は2月の実践ソリューションフェア開催に向けて、現場のオペレーションをさらに研ぎ澄ませている段階です。

(左より)大塚氏、佐野氏
導入前の課題:15年続いた「凝り固まった運用」とEOSの危機
― なぜこのタイミングで15年もの間使い続けてきたシステムを刷新する必要があったのでしょうか。
大塚: 最大の要因は、物理的な限界……つまり保守期限(EOS)です。来場管理に使っていたRFIDシステムや、ブースで説明員が使っていた商談記録を残すためのPDA端末が、もうサポートの限界を迎えていました。
佐野: 長年同じ仕組みを使い続けていたことで、運用が完全に「凝り固まって」いたのも事実です。
大塚: 例えば、以前はRFIDをハガキに埋め込んで郵送していましたが、これには膨大なコストがかかります。しかも郵送スケジュールの都合で、イベントの2週間前には申し込みを締め切らざるを得なかった。「イベント直前の1週間に集客が一番伸びる」という現実がある中で、これはあまりにも大きな機会損失でした。

― 加えて、データの精度、いわゆる「クレンジング作業」も悲惨な状況だったと伺っています。
大塚: はい。弊社のSFAシステムと連携させる際、お客様が入力したデータの「表記ゆれ」が原因で、昨年の実績では全体の50%〜70%ものデータに何らかの手動修正が必要でした。
村田: 1万名を超える規模のイベントで、7割のデータを手動で直すというのは、現場の協力会社様にとっても「限界」を超えた作業量ですよね。
選定の決め手:パッケージの枠を壊す「カスタマイズ性」
― 多くのイベントシステムがある中で、なぜ「EXPOLINE」が選ばれたのでしょうか。
大塚: 私はプロジェクトの途中からの参画でしたが、前任者たちが最も重視したのは「カスタマイズの柔軟性」だったと確信しています。大塚商会の運用は非常に特殊で、汎用的なパッケージに運用を合わせることは、現場の「おもてなし」の質を下げることに繋がりかねませんでした。
村田: 以前のシステムがほぼスクラッチ(自社専用開発)に近いものでしたから、既製品の「これしかできません」という制約は受け入れられなかったんですよね。
大塚: ええ。RFIDを廃止してQRコード化する際も、複数名を同時にスピーディーに認識できるEXPOLINEの仕組みは、私たちが求めるスピード感にぴったりでした。何より、私たちの特殊な運用要件に対して「どうすれば実現できるか」を共に考えてくれる姿勢が決め手でした。
導入プロセスの苦闘:「25種類のファイル」と「地獄の社内審査」
― 10月のイベントに向けて、構築フェーズではどのような苦労がありましたか。
大塚: ……まさに「いばらの道」でしたよ(苦笑)。まず、当社のSFAシステムとの連携に必要なデータ項目を整理したところ、CSVファイルが25種類も必要だということが分かったんです。
村田: 通常のシステム連携なら1〜2個ですから、初めて聞いた時は私も面食らいました。大塚商会様の複雑なデータ構造を一つひとつ紐解き、どの情報をどう変換するかという「マッピング」作業に、たっぷり2ヶ月は費やしましたね。

大塚: それだけではありません。社内のセキュリティ審査という巨大な壁もありました。個人情報を外部のクラウドに入れることへの審査は非常に厳しく、社内調整はまさに「いばらの道」。
村田: 私はその奮闘を支えるべく必要な情報提供をさせていただいていましたが、大塚様が「個人情報を連携させなければ、このDXに意味はない」と粘り強く交渉を続けられたからこそ、今の基盤が出来上がったのだと感じています。
大塚: 異動してきて見積もりの中身もよくわからない状態から、いきなりこの重たいミッション。当時は正直、逃げ出したくなるほどでしたよ(笑)。
導入後の変化:現場運営の効率化とデータ修正率の削減
― 10月の営業部主催の地域イベントを終えて、どのような成果が出ましたか。
佐野: 現場の運用が劇的に変わりました。以前はリアルタイム性がなく、セミナーの申し込み後にスタッフが「当選・落選」を手動で判定していましたが、今は定員に達した瞬間に自動で締め切れる。この「当落判定作業」が不要になったことで、現場の負荷は信じられないほど軽減されました。

大塚: 営業担当者も、自分のお客様が今何を申し込んでいるかをリアルタイムで把握できるようになった。「申し込みがまだのようですから、フォローしましょう」といった、より質の高いアプローチが可能になっています。
10月のイベントでの成果というわけではなく、2月の「実践ソリューションフェア」に向けてのステップという意味では、70%もあったデータ修正率が、システム的な自動クレンジングのおかげで約10%まで下がりました。
佐野: これによりデータの質の担保のための工数が格段に下げられていることは今回のシステム導入の大きな成果だと思います。
村田: 何よりの成果は、「システムに運用を合わせる」という呪縛から解き放たれ、自分たちの運用をシステムで表現できるようになったことですね。

今後の展望:大本番と、その先の未来へ
― 10月の成功を経て、いよいよ2月の「実践ソリューションフェア」に向けたブラッシュアップが始まっています。
大塚: 10月で土台はできました。2月の大本番に向けて村田さんには引き続きご支援をいただいています。
さらに2027年以降を見据えると、来場者に対して、さらなる「感動」を与えたいと考えています。例えば、お客様がどのブースで何を見たかという動線データを活用し、会期終了直後に「あなたの課題解決にはこのレポートが最適です」と即座に還元できるような仕組みです。
村田: 弊社でも10cm単位の精度で動線を追えるUWB技術などの研究開発を進めています。EXPOLINEのカスタマイズ性を活かせば、そうした最新技術との連携も現実的な視野に入ってきますね。
佐野: 10月の経験で、私たちの中にも「システムを使いこなすノウハウ」が蓄積されました。2月の実践ソリューションフェアでは、そのノウハウを存分に発揮し、大塚商会らしい最高の「おもてなし」を実現したいと思っています。
大塚: カスタマイズができるEXPOLINEとなら、もっと面白いことができる。2月の大本番、そしてその先の未来を一緒に作り上げていけるのが楽しみです。
村田: ありがとうございます。1万名超が来場される大本番の成功に向けて、私たちも全力でサポートし続けます!
編集後記(執筆者より)
今回の事例の特異性は、2025年10月のイベントを「システムを鍛え、ノウハウを蓄積する場」として戦略的に活用し、2026年2月の1万名規模の大本番へと繋げるステップアップの姿勢にあります。
「15年続く安定」を捨て、不確実な刷新へと舵を切った大塚商会様。その背景には、担当者様の「自社にノウハウを取り戻し、より良い体験をお客様に提供したい」という強い意志がありました。25種のデータ連携や地獄の社内審査を乗り越えたその先に、今、新しいイベントDXの形が見え始めています。




