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新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、企業が行う展示会やカンファレンス、屋外のイベントスペースなどで行われるリアルイベントの中止・延期が決まっていくなか、オンラインイベントへのシフトが進み、当社が保有するオンラインイベントプラットフォームにも多くのご用命を頂きました。
2020年3月から年末までは本当に目まぐるしい日々であり、その中で得られた経験や学びは語り尽くせません。
当社でいうところの下半期の繁忙期である”秋の陣”が終わって束の間、来期の予算を含めた計画を具体化するタイミングなのですが、
さて、このオンラインイベント需要は一過性のものなのか、それともこの先もずっと求められるのでしょうか、、、?
ワクチンが普及し、リアルイベントが完全に復調した暁には消えて無くなっていくのか?それともこの先もイベントのニューノーマルとして、拡大し続けるのか?これまでとこれからを自分なりに考えてみました。
はじめに、コロナ禍初期に立てていた仮説から
2020年4月頃、1回目の緊急事態宣言の中だったと思いますが、我々が普段イベント中心にプロモーションのお手伝いをさせて頂いていたお客様は、イベントという重要な顧客とのタッチポイントを失い、その代替手段についてのアイデアや事例を求められていました。
その際に我々がお客様へ示していたのがこの図。今は何しろオフラインがダメなのでオンラインでタッチポイント作る以外ないですと。
しかしながら、オフラインもそのうち復活しますと。でもたぶん、オンラインは爆発的に普及して、オフラインに戻らない人も出てくるからハイブリッドになりますと。
しかし、いきなりパリッと復調することはないので、徐々にハイブリッド化しますと。
ハイブリッドになった時の最適解(バランス)は我々もまだわからないので、今はとにかくオンラインで挑戦をしませんかと。こんな話をしていました。
あれからおよそ1年が経つ今、この仮説は大まかにはあっているようですが、ここまで状況が長引くとは思っていなかったというところもあり、そういう意味ではまだ結論には至っていない。
海外では、オンラインイベント市場が年間23%で拡大していくという調査結果もありますが、日本におけるイベント市場はハイブリッド化するのかどうか?そもそもハイブリッドって具体的にはどんな状況?この辺を考えていきたいところです。
現在の状況をおさらい
2021年1月現在の概況
まずは、6月に公開されたPeatix様の調査データから。
▼オンラインイベントに関する調査
(Peatix Japan株式会社)
2月から5月までのわずか3ヶ月程度でキャズム超えしたような感じ。。
それから現在までの状況は2度目の緊急事態宣言もあり、大きく変化しているので、まとめてみました。こんな感じです。
・最初はコロナ禍でリアルイベントが開催できなくなったことの”代替手段として”多くの企業や団体が実施
・現在は珍しさもなく、”普通”になってきている。サービス新規参入も超拡大し、陣取り合戦状態。
・ほとんどの企業が”とりあえず”オンライン主催を経験し、今後はより成果の高い手法や、組み合わせの模索へと進む
やってはみたものの、”成果”に対する企業の考えはそれぞれ。
これはいいね!今後もこれだ!あるいは、この部分には効くねと、成果を実感する企業もあれば、リアルには勝てないねと後ろ向きな意見もチラホラ。企業によって良い悪いが存在している。
イベントについて考える際、「主催社」「来場者」「協賛者」という3つの観点から分析することが一般的ですが、まずはシンプルに「主催社」と「来場者」という側面から考えてみます。
イベントと言っても、とても広いので・・・。
”イベント”と一口に言っても、主にリードジェンの為に活用することもあれば、クロージングで使うケースもあり、ユーザー会やインナー向けのイベントなど多岐にわたるので、
ここでは投資と課題の多い(大きい)BtoB企業が実施する、外部向けイベントをスコープにしていきたいと思います。
※カンファレンス、セミナー、展示会、商談会、シンポジウム、この辺の話です。
オンラインイベントに対する、来場者(視聴者)の視点
来場者にとって、最大のメリットは「会場へ行く」という物理的な移動が発生しないため、外出までの準備や会場までの移動にかかる時間と金銭を節約できること。
ビッグサイトやメッセ、パシフィコといった展示場に、片道1時間かけてわざわざ足を運び、平均2時間の滞在時間を使って帰社する合計4時間。大切な時間を使って何をしにいくかというと、、
下の図はリアル展示会にて実施された来場者アンケートです。これを見ると、来場者が展示会場へ足を運んだ最大の理由は「情報収集」であることがわかります。
コロナ禍以前は情報収集を行うため、往復にかかる移動時間と交通費を犠牲にする必要がありました。
- 人気のセッションを予約して、
- 片道1時間かけて展示場に向かい、
- 隣のおじさんと肘がぶつかるギチギチに人が詰め込まれた
- オガクズとアミノールの匂いが充満した、
- 温度管理の行き届かない乾燥した部屋で、
- 配られた冷たい弁当とアンケートを膝に置いて、
- 1時間半の講演を聞いて、
- また1時間かけて帰社する
なんてのは当たり前でした。私もこれを1,000回くらい経験しました。。
コロナ禍によってオンラインイベントが主流となった今、「情報収集」はインターネットの最大の得意分野。オンラインイベントにアクセスできるネット環境さえあれば、手間やお金をかけることなく情報収集ができます。
大規模な展示会ともなれば広大な会場を歩き回って情報を収集する必要があったものの、オンラインイベントであれば会社や自宅に居ながらにして興味のある情報を効率良く見て回れる。
▼オンラインイベントに関する調査
(Peatix Japan株式会社)
つまり、リアルイベントへの参加主目的であった”情報収集”はオンラインで超効率的に果たされてしまう今、現地へ足を運ぶ特別な理由が無い限り、顧客はリアルイベントよりもオンラインイベントを選ぶ傾向になることは必至で、リアルイベントには一層の体験価値提供や付加価値が求められます。
コロナ禍以前よりも、参加者の目はシビアになります。
オンラインイベントに対する主催社の視点
コロナ禍によって、これまでプロモーションにおける重要な手段となっていたリアルイベントは制限を余儀なくされ、続々とオンラインイベントを実施する企業が現れ、イベント業界には大きなムーブメントが起こりました。
最初は視聴者が興味本位で集まり、想像を超える集客を実現しました。
当社も、博展と一緒にイベントメディア(Think Experience)を立ち上げ、ウェビナーを実施しましたが、初回の集客は1,000名を超え、正直とてもびっくりしました。
しかしながら、これまで頻繁に行ってきた訳でも無いのでイベント会社の我々ですら、準備の手間や負担は非常に大きいものでした。
集客やコンテンツについては、オンオフ関係ない課題ですが、オンライン特有の課題としては、マネタイズが確立されていない点や、双方向性、コミュニケーション手段あたりと感じます。
反面、メリットと捉えているのが、、
このデータで面白い点は、誰かが課題だと思っていることは、別の誰かにとってはメリットだと感じていることもあるということ。
集客に苦戦しているけれど、遠方や海外などからより多くの参加者を期待できる。とか、参加者と主催者のコミュニケーションといったインタラクティブ性を課題としながらも、その点についてはメリットだとも言っている。
オンラインイベントに可能性を感じながらも、その実現方法についてはまだまだ挑戦が必要であり、勝ち筋を見つけた企業は徐々に増えていっている(増えていく)ということだと思います。
上記の調査データに加え、我々が現場で今お客様と会話する中でよく聞く課題はこんな感じです。
- 香りや味を伝えにくい
- 偶発的な出会いを創出しにくい
- イベント後の商談転換率が低い
- 交流が取りにくい(出展社 ⇄ 出展社・視聴者)
ただし、これも様々なアプローチによって勝ち筋も徐々に見え出してきています。
例えば、香りや味については事前にサンプルを送ったり、偶発的な出会いを作り出すリコメンド機能や、プッシュ通知、交流についても、相手の都合に合わせて選択できるコミュニケーションの方法を複数用意したりと、、、
まだまだオンラインでのコミュニケーションは勝ちパターン化には至っていませんが、挑戦に向けて前向きなお客様と一緒に攻略が進んでいます!
そして、1番のポイントは「商談転換率」であり、ここが今後のオンラインイベントの在り方を大きく位置付けるだろうと思っています。
企業はただイベントをしたくてするのではなく、商品を売るための道筋の一つとして「イベント」という一手段を選択しているだけであって、商談転換率の低い施策を選択はしないわけです。
オンラインイベントにおいて商談転換率を上げるということ
なぜ、商談転換率が低いのか?についてはまだまだ模索中ではありますが、
一つの仮説は「体験価値」かなと思っています。
オフラインでは商品やサービスの”情報収集”をする際に、わざわざ会場へ出向いて、おじさんと肘をぶつけて、展示ブースで1社あたり平均10分、滞在中に平均10社から情報提供を受けます。
苦労したり、素晴らしいホスピタリティを受けたりしながら得られた情報を持って帰るわけですから、体験の深度としては高い。(思い出に残る)
反面、オンラインでは、これが圧倒的に薄い。
落ち着ける自宅でコーヒーを飲みながら、他の仕事をしながらラジオを聴く感覚で動画を見て、打ち合わせの時間になればボタン一つで離脱する。
明日になれば、もう忘れている。なんてこともしばしば。このタイミングで参加したイベントの主催企業から営業電話が掛かってきても何のことだったか、、
もっと言えば、会社に電話してくるので捕まらない。やっとの思いで捕まえた頃には、相手に忘れられている。
これが商談転換率を下げている理由と仮説を打つと、採るべき手段は、圧倒的な体験価値のあるイベント(コンテンツ)を創るか、覚める前に手を打つか、タッチポイントを増やすか、それら全部やるか。じゃないかと思っています。
①圧倒的な体験価値のあるイベント(コンテンツ)を創る
これが一番難しいテーマですが、そのイベントやコンテンツが良かったか悪かったかは、提供側が決めるのではなく、体験者が決める。ということが大事だとすると、どれだけその人にあったコンテンツをミートさせられるか?だと思います。
BANT情報だとか、サイトの中で閲覧した資料やページ、過去に参加したイベントなどから、その人にあった情報を”タイミングよく”見せられるか?ということであり、、
ヴァーチャル空間や、メタバース、アバターを創ることは一つの演出手法に近く、これが体験価値の本質では無いと考えています。
②冷める前に手を打つ
イベントを終え、翌日にデータを確認し、優先順位を決めて、さてフォローアップというこれまでの時間軸では冷めてしまいます。そのため、ユーザーがサイトの中で体験する時間をあらかじめ想定しておき、ログインを起点にその時間が経過したらすぐにフォローアップする。こうして冷める前に手を打つ。
③タッチポイントを増やす
これまでは、イベント開催となると、コンテンツの量は出来るだけ多く、あれもこれも準備して、とにかく何を聞かれてもすぐに対応できます。
という準備(出展物)に対する考え方は非常に多かったです。これがオンラインになると動画の尺をなかなか削れない。という事象にすり替わる。
しかしながら、今後はなるべくテーマを短く切って、短尺で体験時間よりも体験頻度を高め、”数”で攻めるというアプローチをしていくことも検討したいものです。
同じテーマであっても何回でも開催すべきであり、1時間のコンテンツは30分に切って2種類にしても良い。
ところで、この仮説通りに実行していくと何が起きるかというと、とにかく準備や制作の工数がかかる。という課題が新たに起こる。そしてそれは、すでに顕在化している課題。
この手間を減らす為に、同じテーマであればアーカイブを提供することで対応できるようにしたいし、都度プラットフォームの契約をして設定をして、、とうのは避けたい。
そう考えていくと、イベントコンテンツをまとめていく器としての場所が必要になってくる。そしてその器は、ユーザーフレンドリーでブランディングがきちんと成されたもので在りたい。
というわけで、次にくる流れはきっと。
イベントプラットフォームのメディア化、そしてそのブランディング。
イベントが実施できる自社オリジナルのプラットフォームを抱えていく潮流になっていくと予測。1社1メディア(1家に1台)の時代へ。
それはウェビナーシステム(吊しのSaaS)のようなものではなく、もっとその業界のユーザーにあったアプローチができて、自社のブランドもきちんと魅せられるようなもの。
これを窓口にしながら、企業はいつでも簡単にイベントを実施し、様々なチャネルとの関係性を獲得、育成していくことができる。
準備にかかる工数を効率化できるのであれば、オフラインイベントが問題なく開催できるようになった際に、オンラインも合わせてユーザーへ提供できる。
つまり、ユーザーは自分の都合に合わせて、参加手段を選択できる。
ハイブリッド時代が訪れた際には、このような思想がフォーマットになっていくのではないかなと考えています。
最後に
・オンライン1択の状況から、徐々にオフラインイベントが感染対策を取った上で徐々に復調。
・しかしながら、オンラインの甘い蜜を吸ったユーザーはイベント参加に対してシビアな目、これは今後も続くと予測。
・主催側のオンラインイベント課題はいくつか残るが、徐々に勝ちパターンも見え出してきた。
・主催社が超えなければならないポイントは「商談転換率」であり、「体験価値」「フォローのスピード」「接触数」は大事かもしれない。
・これをクリアしにいくためには、効率化とブランディングの2輪を回す必要がある
・つまり、イベントのハイブリッド化は、プラットフォームのメディア化
そこで、我々がやっていることは…
スプラシア(当社)はプラットフォームを軸にしながら、イベント実施に対して必要な「集客」「コンテンツ制作・配信」「事務局」「マーケサポート」を提供させて頂いている企業ですが、
上記のような時代を想像し、「EXPOLINE エキスポライン」というイベントプラットフォームに、「カスタマイズ性」「データ活用」「運用型」という3つのコンセプトを設定しています。
つまり、お客様がやりたい機能やUIを自由に実装できて、既存のMAやCRMとも連携できて、長期的に保有しながら短期的なPDCAを回せるようなモノです。
お手伝いできることがありましたら、お問合せください。