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今回は2025年1月14日、当社内にて行われた当社社員による対談記事をお届けします。
対談には代表の中島と浅尾、大河内、水口が参加。
2024年のBtoBイベントを振り返りつつ、特にトレンドとして多くの企業様から要望を頂いたマッチング機能について、それぞれの視点から語ってもらいました。
2024年のB to Bイベントシーンを振り返る
水口
本日は2024年に色々とイベントをお手伝いしてきたなかで、どのようなトレンドや取り組みがあったのか、お話ししていければと思います。
中島
イベントにおけるテクノロジーが注目され始めたきっかけは、やはりコロナのパンデミックです。
オンラインにシフトしたことで、「イベントにおけるデジタルの重要性」について主催者が考えざるを得ない状況になり、我々にもデジタルを使った施策に対する要望が非常に増えました。
パンデミックが落ち着いてからは、オンラインではなくリアルイベントに関する施策が中心となっています。トレンドでいうと、「体験」に対してコストを使ってくれる顧客や、「成果」を重視する顧客が増えたと思います。
水口
最近のトレンドはいかがでしょうか。
中島
最近よく聞くキーワードですと、やはり「AI」、また今日のお話のテーマにもある「マッチング」、そしてデジタルの体験価値を最大化するためのツールという文脈で「デジタルマップ」などがあります。
浅尾
「データベースの統合」もそうですね。もともと企業が持っている会員や顧客のデータと、イベントで取得したデータをどう統合していくか。また、複数イベントの管理を一つのプラットフォームに統合したいというニーズもあります。
水口
商談会や合同展など、イベントの種類によって違いはありますか?
浅尾
商談会だと「効果測定をきちんとしていきたい」という主催者が増えてきたなと思います。
今まで商談会では来場管理くらいしかしないことも多かったのですが、他のデータも取って、費用対効果をより詳しく会社に報告したいという傾向があります。
中島
合同展は出展者に喜んでいただくため、また面積も大きいので、やはり「マッチング」や「マップ」という観点が重要になります。
浅尾
年に数回、複数の合同展を開催している主催者であれば、出展社や顧客を継続して同じデータベースの中で管理したいという、「データ統合」の文脈は必ず入ってきます。逆に、年に一度だけ合同展を主催している協会さんからは、あまりデータ統合という要望は頂いていないですね。
中島
年一回の合同展でも、10万人以上が来場するような巨大な展示会ですと、翌年のことを考えてデータ統合していきたいという話はありました。
水口
あと東京と地方のデータを共通化させていくという考え方も、今後ありそうです。
浅尾
商談会やカンファレンスだと、「ブランディング」の一環でイベントDXを打ち出すこともあります。
「我が社のイベントは他社のイベントより最新のものですよ」とPRするためにイベントDXを入れる、外に向けたイベントDXという感じです。
中島
イベントでテクノロジーを活用すること、それ自体がブランディングになっているということですね。
– SaaS系事業者が主催する商談会 –
イベントの価値の向上のために、ビジネスマッチング機能の進化を突き詰める
水口
2024年は「マッチング」というキーワードが各社から出てきて、多くの主催者から「マッチングをやりたい」という要望を頂きました。
我々がマッチングに取り込んだイベントの一つに、日本を代表するSaaS 企業が主催しているイベントがあります。大河内さんは、担当されて何年くらいでしたっけ?
大河内
会社としては回数も期間ももう少しありますが、私が担当をさせて頂いたのは3年間で、3回くらいお手伝いをしてきています。
水口
特に2024年はこれまでの集大成というか、今まで積み上げてきたものが一つの形になってきた年だったとお聞きしたのですが、どんな要望をいただいて、どんなことを実現してきたのか伺えますか。
大河内
最初に私が話を頂いたときのオーダーは「スタートアップとVC・CVCを出会わせたい」「参加者がプロフィールを見て、お互いにリクエストを送って出会えるプラットフォームを作ってください」というものでした。
その後、2回3回と開催するにあたって「一対一だけでなく同行者がいる商談にも対応したい」「マッチングの上限を料金プランによって分けたい」「商談を保留にする人が多いから保留率を下げる施策を入れたい」というように、いろいろ相談を頂きながら、3年かけてどんどん進化していったという感じですね。
汎用化された単純マッチングではなく、アルゴリズムから考える
大河内
かなりたくさん答えてもらいました。全ユーザーの情報を「EXPOLINE」に蓄積し、ユーザー同士のマッチ度を裏で計算して、おすすめ機能でその人にとってマッチ度の高い人が順番に並んで表示されます。
ただし、こちら「プロフィールがマッチしているから加点していく」という単純な仕組みにはなっていません。
主催者さんと一緒に、スタートアップとVC・CVCの組み合わせを50通りくらい考えて、その人たちがうまく会えるようなシナリオとアルゴリズムを作っていきました。
中島
最初にたくさんの組み合わせを想定してから、その人たちがうまく会えるアルゴリズムを設計していったんですね。
探す人が能動的に動く「検索」と、受動的に受けられる「リコメンド」機能があれば、マッチング数を向上させることができるのですか?
大河内
マッチング数の向上ために重要なポイントは、まずリクエスト数を増やして、そこからリクエストを処理するための流れ、フローをきれいに作ってあることだと思います。
「リクエストを受け取ったらすぐメールが来て、メール上で承諾や辞退も選べる」というように、可能な限りステップ数を減らすようにしています。
中島
すばらしい。マッチしたらほとんど商談がされているのでしょうか?
大河内
そうですね。実際に商談されています。
水口
機能面以外での工夫もあったのでしょうか?
大河内
はい。機能もさることながら、来場者、出展社双方に利用をしていただくための啓蒙がすごく大事だということも見えてきています。
水口
具体的にはどのような取り組みがあるのでしょう?
大河内
一例にはなりますが、出展者向けのノウハウ共有会のようなものを開催し、マッチング機能の利用タイミングや利用頻度、マッチング後のアクションからコミュニケーションのためのスクリプトまで、かなり細かくお伝えすることで機能利用を促す取り組みをしていました。
– 業界特化型の合同展示会 –
イベントで得られる膨大なデータからマッチングを生み出し、接点の拡充を実現するプラットフォームへ
水口
浅尾さんは来場者が100万人を超える、日本を代表する産業に関する合同展示会を担当されています。どんな要望を頂いて実現してきましたか?
浅尾
始めは「これまで手動でやっていたマッチングをシステム化したい」というところから始まりました。
すごくマッチングのパターンが多くて。出展者×出展者、出展者×来場者、来場者×来場者、出展者の中にもスタートアップと事業会社があって、責任者と担当者という分類もあったので、16×16タイプのマッチングをしたんですよ。
今後は東京の会社同士だけでなく、地方の展示会にもアプローチをかけていきます。
もし大阪や名古屋、九州の主催者と連携できれば、都市部と地方のマッチングサイトになっていきますし、イベントをフックにしたシステムから、年間通してずっと使えるようなシステムに進化していくことを目指しています。
これはデジタルの価値を活かしたイベントのDXになり得ると思っています。
業界課題を解決するプラットフォームとして捉える
中島
もともとは「大企業の中だけのイノベーションでは業界の活性化が不十分なので、スタートアップともつながることによって、産業全体を拡張していこう」というのが始まりなんですよね。
そしてマッチングを大量に創っていくにはやはりITの力が必要であり、その業界や会社のワークフローに従った機能と運用の設計をきちんとしていくことが必要となると、汎用的なマッチングシステムの導入だけではなし得ないですよね。
水口
イベント期間中だけでなく長期に、また東京だけじゃなくて地方にも、と縦にも横にも広げていくイメージですね。同じ手法を、他の産業にも用いることはできそうですか?
浅尾
はい、さまざまな産業の展示会で「スタートアップゾーン」が作られていることは多いです。ただ、大抵はパビリオン形式になっていて、それぞれのコマ面積も小さく、スタートアップからすると不利な状況で見つけてもらいにくい、魅力が伝わりにくいので、こういったマッチングシステムを導入していくこと自体は進んでいくと思っています。
中島
海外パビリオンも一か所にまとまっています。
グローバルも同様に魅力が伝わりづらかったり、言語の壁もあったりしますが、単にエリアを作るだけではもったいない。今回、我々が取り組んだ案件のように、ITの力でマッチングさせていければ良いですよね。
他にも、当社では金融、特に銀行が開催するマッチングイベントのシステムも多く手掛けさせていただきますが、この場合は銀行が支援企業(コンシェルジュ)という立場で、いわゆる大企業と中小企業とのマッチングを促進するのですが、マッチング後の「場所(席)」「時間」までをシステムでコントロールするのでとても複雑ですが、まだ手動でとんでもない工数をかけて実施されているケースも多くITの価値が発揮できます。
今後の課題
マッチング機能だけでなく運用面でもフォローを
水口
今後の課題は何でしょうか。
浅尾
スタートアップはマッチングしたいので、すごく一生懸命オファーも出すし、メッセージもたくさん送るんですが、投資する側はそういうものが大量に来るので、裁くのも大変で、人手も足りない。
そこでメッセージの無視や、当日キャンセルが発生することもあります。テンションやモチベーションが違うんです。
中島
会うモチベーションじゃない場合はマッチングしても、会場で会ってくれないんですね。
大河内
出展者と来場者のモチベーションの差に関しては、ある程度は仕方がないと思います。
それを対等にするために有料チケット制のビジネスマッチングイベントを開催したケースもあるのですが、ふたを開けてみると、マッチングイベントでもモチベーションの差は見受けられました。そこは次の課題なんじゃないかと思います。
水口
機能だけの話ではなく、運用やイベントの立てつけをどうするかという話にもなってきそうですね。
大河内
スタートアップと比べて、VC・CVCや事業会社はドンと構えて待っていて、「何かいいことがあればいいな」ぐらいのモチベーションでいることが多いです。
そこで、次のイベントではVC・CVCにコンシルジュをつけて、おすすめする人に会いに行ってもらうという取り組みを行おうとしています。
浅尾
出展者説明会も重要です。
「この期間は1週間に1回メッセージを送ってください」「この期間は3日に1回送ってください」「最後は毎日送ってください」「こういう文面を送ってください」「この通りやっていれば一定の成果は出ます」と説明会で伝えておくとか、運営面でのフォローも大事だと感じます。
中島
「イベントでマッチングして出会う」ということに多くの人は慣れていませんので、そこをサポートしていかないといけないですね。
マッチングシステムにおけるUIの最適解は?
浅尾
情報量が多すぎるUIは問題ですよね。
大河内
スタートアップが提供しているものはカテゴリー化して、一発で見られるタグにしておくなど、検索性はとても大事です。カテゴライズが難しいという場合もありますが。
中島
最近、海外のツールを色々調べているんですが、海外のマッチングイベントだとスワイプ式のUI(※)も多いんですよね。
※いいなと思ったら右にスワイプ、そうでないなら左にスワイプする形式
中島
リストから探す形式でなく、スワイプ式を採用するとどうなると思いますか?
浅尾
恋愛系のマッチングアプリだと、マッチングした後のメッセージのやりとりが面倒と言われていますね。
大河内
ビジネスのマッチングでは、マッチ=面談も決まるというイメージなので、そこのわずらわしさはないかもしれません。
水口
事前にそれほどコミュニケーションは必要ないのか。
中島
UIは重要ですよね。汎用化されたプラットフォームのUIを見ていると、どの程度マッチングしているのか正直疑問です。おそらく出展社が頑張って来場者に営業連絡しているだけなのではと思います。
大河内
UIには特にこだわっています。「誰と誰をどういう風に出会わせたいのか」は、イベントによって全部変わってきますから。
おそらく、苦労せず簡単にマッチングさせられるイベントというのはないのだと思います。
水口
機能面では我々にもずいぶんノウハウが溜まってきましたが、「どうマッチングさせるのか」という部分はイベントごとに一生懸命考えていく必要があるということですね。
事業共創と産業全体の拡張を担うマッチングの可能性
浅尾
最近「事業共創」という言葉をよく聞くのですが、事業共創まで考えてマッチングするのはすごく難しいですよね。
どの会社のどのサービスとマッチングすれば新しいものを生み出せるのか、来場者は普通わからないですし。
中島
そこはAIによるリコメンド機能が有効かもしれません。
AIが「あなた自身は気付いていないけど、この企業はあなたの企業にとってプラスになりますよ」と導いてくれて、「なぜ私におすすめなんですか」と聞けば答えを返してくれるというような。
浅尾
そこまでAIがやってくれたらすごいですね。
中島
参加者自身も気が付いていない「その人と会うべき理由」をAIが教えてくれれば、イベント全体のリクエスト数も増えますし、最終的なマッチング数も増えていきます。
なお、これはマッチングまでのフローの入り口の話ですが、もちろん全てのフローにおいて離脱させないような仕掛けをしていかなければいけません。
浅尾
奥が深いですよね。事業共創に関していうと、マッチングした後にも使えるダッシュボードを開発中です。
中島
そこまでいくと、もはやイベントプラットフォームというより、コミュニティプラットフォームですよね。イベントでマッチングさせて終わりではなく、ゴールの事業共創までサポートしますと。
浅尾
そこまでやりたいですね。秋には第一弾は完成するので運用結果が楽しみです。
協会主催者が目指す「業界全体の発展」にもつながりますし。
中島
事業共創までサポートできると、主催者にとってはマネタイズのチャンスが広がるかもしれませんね。
水口
最後に、マッチングやイベントDXにまだ取り組めてない主催者さんや会社さんに向けて、一言メッセージを頂けますか。
中島
お話してきた通り、B to Bイベントはたくさんマッチングすればいいというものではなく、どうマッチングさせるか、マッチング後にどう活用していくかも重要です。
クライアント様に合ったマッチングの在り方をイベントごとに考える必要があり、汎用的なプラットフォームでは対応に限界があります。
その点、我々デジタルエクスペリエンスのプラットフォーム「EXPOLINE」はセミオーダー形式でクライアント様の目的に合わせてカスタマイズ可能ですし、また機能をご提供するだけでなく、これまで多くのイベントをサポートしてきた経験から、運用方法も含めてサポートさせて頂いております。
2025年はぜひ共にチャレンジをして、イベントを少し前に進めるお手伝いをさせて頂ければと思います。