大手電機メーカーの考える、大規模全社イベントの作り方・活用方法とは?

クライアント :
沖電気工業株式会社 様
プロジェクト :
OKI PREMIUM FAIR 2022

プロジェクト紹介

今回で16回目の開催となる、沖電気工業株式会社(以下、OKI)様が開催するプライベート展『OKI PREMIUM FAIR』。
コロナ禍の2020年より、オンラインでのイベント開催を続けており、今年初めて一般の方もご参加いただけるイベントとした。
今年度は新たな取り組みとして、別のOKI様主催のイベント『OKI Innovation World』を同時期にEXPOLINEを使って開催した。
例年、『OKI PREMIUM FAIR』は「おもてなしの空間」「プレミアム感」をコンセプトに、他社にはない臨場感に拘った会場作りやリッチなデザイン、機能を持つイベントサイトを設計してきたが、今年度は、豊富なコンテンツを「フリーワード検索機能」や「タブ分け」「キーワード絞り込み」で探せるといったユーザビリティに配慮した機能や導線設計を取り入れた。
また、『OKI PREMIUM FAIR』で制作されたコンテンツやWebサイトは、OKI様の公式ページである『OKI Style Square Virtual』へ移管され、コンテンツ資産として運用されている。

概要

サイト機能

・WEBサイトにおける参加者の行動ログ取得
・資料ダウンロード機能
・アンケート機能(イベント全体、展示個別)
・配信ツールVimeoを用いた動画配信
・招待者リストシステムとの連携
・フリーワード検索機能

コンテンツ紹介

・基調講演
・36の展示
・22のセミナー
・テーマエリア

『OKI PREMIUM FAIR』『OKI Innovation World』2つのイベントの併催した意図とは

スプラシア)
この度は、インタビューのお時間をいただきありがとうございます。

2023年度は、過去2年間お手伝いさせていただきました『OKI PREMIUM FAIR』に加え、『OKI Innovation World』も同時に開催した形となりましたが、
それぞれのイベントの目的やコンセプトを教えていただいてもよろしいでしょうか。
また、同時開催した理由についてもお聞かせください。

OKI様)
どちらのイベントもOKIグループの良さを知ってもらうという『ファン作り』を目的として実施していますが、それぞれのイベントでは役割が違っています。

『OKI Innovation World』(以下OIW)は、最先端の取り組みを紹介し、OKIを知ってもらうきっかけになってほしいという目的で開催されました。ある意味、“とがったコンテンツ”を掲載していたイベントであったため、OKIのことを知るフックとなることを期待していました。

一方、『OKI PREMIUM FAIR』(以下OPF)は、OKIの総合展という位置づけですね。OKIが今取り組んでいることを網羅的に紹介し、来場者にOKIとのビジネスを具体的に描いてもらえるようになることを役割としています。

今年これら2つのイベントを併せて開催した理由としては、「『OKI Innovation World』をきっかけに、OKIを知っていただき、『OKI PREMIUM FAIR』でファンになってもらう」という、2つのイベントを通しての大きな目標を達成するためでした。

「OIWをきっかけにOPFを見てくれる」という狙った行動をしてもらえるように、
OIWを先に公開しつつも、2つのイベントの開催時期が重なる部分を作ったり、
同一のイベントプラットフォーム(EXPOLINE)で構築し、1度ログインすると自由にどちらのサイトも行き来できるようにしたりした、ということですね。

oki innovation world 2022 セミナー
△『OKI Innovation World』:最先端の取り組みを、縦スクロール型のサイトで紹介。コンパクトで気軽に見てもらえるイベントサイト
oki premium fair 2022 エントランス
△『OKI PREMIUM FAIR』:OKI様の取り組みを総合的に紹介。ワクワク感を演出するリッチなイベントサイト

初めてイベントを公開してみて見えたこととは?

スプラシア)
なるほど、「OKIのファン作り」という目標のために、2つのイベントのコンセプト作りや開催時期なども戦略的に設定されていたのですね。
今回はその他にも、今まで招待者限定のクローズドイベントであったOPFを今まで取引のないお客さまに対しても公開し、広くご参加登録を受け付けたという新しい取り組みがありましたが、こちらはどのような意図があり実施されたのでしょうか?

OKI様)
今年から公開を始めてみた理由としては、試験的な動機が強かったですね。

せっかくオンラインでイベントを開催しているのだから、関係値がまだ少ない新規顧客にもアプローチできるはず、という認識はずっと当社内にもありましたし、
2022年は一般公開にチャレンジしてみよう、となったのがきっかけです。

また、これまでご参加いただいたお客さまより、「この内容をもっと広く公開してほしい、クローズイベントではもったいない」というお声をたくさんいただいていた、ということも理由の1つでもあります。
沖電気工業株式会社様にてインタビュー中の様子

スプラシア)
次は、OIW/OPFの御社内での評価についてお聞かせください。
OKI様の営業の方々から今回の開催に対してどのような評価をいただいておりますでしょうか?

オンラインイベントで社内コミュニケーションが活性化!

OKI様)
社内の別部門の取り組みを知ることができたという点で、好評を貰っています。
今回、社員のイベントサイト内覧数も確認したのですが、その数を見ても明らかで、
イベント会期中に社員のアクセスが多くありました。

オンラインイベントだからこそ全国の多くの社員にアクセスしてもらうことができ、社内の相互理解やインナーコミュニケーションの促進といった成果を出すことができたのだと思います。

スプラシア)
素晴らしい成果ですね。
営業の方々からの評価はいかがでしょうか?

OKI様独自のオンラインイベント営業術

OKI様)
基本的に、当社の営業からOIW/OPFへの評価は高いですね。営業活動の中で、オンラインイベントをしっかり活かしているようです。

これはオンラインイベントを始めた当初から独自で続けていることなのですが、
私たちは、オンラインイベントのことを「持ち込み型イベント」と呼んで、営業に活用しております。

具体的にどんなことをするかというと、
営業がお客さまのもとへ訪問する際に、“オンラインイベントのサイトが入ったタブレットやサイトが閲覧できる営業ノートPCを持ち込み“ます。お客さまの会社で、オンラインイベントを一緒に見て回る、つまりオンライン上でアテンドする、ということをしています。 「ご自由に見て回ってくださいね」というようなお客さまに対して丸投げのスタイルではなく、お客さまの貴重なお時間を一定時間いただくことで、こちら側の本気度が伝わる、なので確実に何かを持ち帰っていただける、ということができていると思います。

スプラシア)
素晴らしい取り組みですね。
御社内でそのようなオンラインイベントを使った営業活動のやり方を浸透させるのは、大変だったのではないでしょうか?

OKI様)
いえ、実のところそうでもないですね。
というのも、「お客さまの元にオンラインイベントを持ち込んで一緒に見て回る」営業方法は、
今まで当社で行っていた「お客さまのもとへ訪問しカタログなどを見せながら製品をご説明する」という営業スタイルと本質は変わらないですからね。

今までの得意なOKIの営業スタイルに則った形なので、
事前に営業に向けオンラインイベントの説明会を実施したり、ツールの使い方をインプットしたりすることで、問題なくしっかりしたアテンドをしてもらえています。

また、イベントの後には、OPF開催後にはショールームの予約が多く入っています
オンラインイベントでのお客さまへのアプローチを次の工程につなげているという点で、イベントの具体的な成果につなげられているのではないかと思います。

スプラシア)
なるほど、御社独自の強みを活かしたオンラインイベントの活用方法を確立されているからこそ、
具体的な成果につながっているのですね。

既存のお客さまに対してのアプローチ方法をご教示いただきましたが、今年から参加し始めた一般のお客さま、つまり新規のお客さまに関してはどのようなアプローチをされていたのでしょうか?

「ワクワク感」と「見やすさ」最適なUIとコンテンツを目指す

OKI様)
新規のお客さまにはご自身でオンラインイベントの会場を見て回っていただくことになりますので、誰が見ても分かりやすく見やすいようにオンラインイベントのサイトを設計するということをしました。

『OKI PREMIUM FAIR2022』のイベントサイトの一部を実際にみてみる
(OKI style Square Virtualへ移動)

OPFは例年、来場していただいた方へ「おもてなしの特別な空間」を提供することをコンセプトにしています。
例えば、2020年度は“まるで本当のイベント会場にいるような没入感”を演出するために、今でいうメタバースのような空間で展示コンテンツを閲覧できるようにしていました。

oki premium fair 2020
△2020年の『OKI PREMIUM FAIR』の展示会場の様子

「OKIが何か面白そうなことをしているぞ」という先進的なイメージや、イベントならではのワクワク感は醸成することはできたのではないかと思うものの、
スムーズさのなさはぬぐえなかった
と思います。

自分自身が他のBtoBオンラインイベントに参加していても感じることなのですが、
メタバース的な空間や、“イベントの遊び心“的な演出は、見る側としては長く感じてしまうものですね。「早く中身を見せてほしい」と、演出を強制的に”見せられている”気持ちになります。

oki premium fair 2022 展示一覧
△OKIのDXという切り口のほかに、すべての人になじみのあるビジネスワードでも検索できるように

そこで、今年度は2つの切り口からタブ分けされたコンテンツ一覧や、タグでの絞り込み、フリーワード検索の機能などを導入し、
目当てのコンテンツにすぐにたどり着けるようなより洗練されたUIを目指しました。

ただ、あまりそこの効率だけ突き詰めていくと、普通のウェブサイトと変わらなくなってしまいますから、
バランスのとり方が非常に重要だと思っています。

しっかりしたストーリーを持ちつつアテンドすることや、お客さまへ新しい手法で情報をお伝えしようとしているという取り組みの表明のためには、空間的な演出が必用だと思います。一方で、お客さま目線での使い勝手という目線も考慮するべきです。
2022年度はそのワクワク感の演出と、情報へのアクセスしやすさのバランスをとったサイトとなったのではないかと思います。

UI/UXだけでなく、もちろんコンテンツの中身も質を向上させるようにしています。

例えば、OIW/OPFのコンテンツはここでしか聞けない開発者の生の声を、お伝えするようにしました。また、2021年度の反省で、長すぎるコンテンツは閲覧してもらえないということが分かりましたので、結論を先に述べるような構成で作るようにしました。
極端な話、最初の30秒だけでも見ていただければ、印象に残るようなコンテンツにしております。

どれだけ動画の中盤で良い内容を伝えようとしても、イベントサイトに来訪してもらい最初にコンテンツをクリックいただいた数十秒間か、で来場者の方には興味があるか無いかの判断を下されてしまうわけですから、
その勝負できる最初の数十秒間で最大限効果を発揮できるようにする、という意味でコンテンツの“質を向上”させました。

スプラシア)
どのような人でも使いやすいイベントサイトを、過去2年のOPFの経験があったからこそブラッシュアップし作り上げることができたのですね。
一方、今回見えてきた新規のお客さまへのアプローチで課題となりそうな部分を教えていただけますでしょうか。

OKI様)
これはOKIだからこその課題だと思うのですが、どれだけ分かりやすくコンテンツやサイトを作ったとしても、
そこで取り扱っている商材やサービスが難しく1回みて覚えられるようなものでもないため、
お客さまに「ご自身でご自由に見て回ってください」という丸投げのスタンスを取ることはできないな、と感じています。

まだアイデアではあるのですが、「初めての方はこの順番でこのコンテンツを見るのがおすすめです」といったようなサイト内の”歩き方”を表示してあげるなど、
営業が一緒について回ることのできない新規のお客さまにも、OKIの商材やサービスをご理解いただける仕組みが今後は必要になってくると思います。

スプラシア)
全ての来場者の方が、同じくらい能動的にコンテンツを探し、そこから情報を持ち帰っていただけるということはないので、手助けをしてあげるようなイメージですね。

最近のオンラインイベントでは、「あなたにおすすめのコンテンツはこれです」というリコメンド機能の需要がとても増えているのですが、来場者の“自分事化”だけでなく“コンテンツへの理解度向上”という面でも活用が期待できますね。
OKI担当者様
OKI様)
はい。あとは、イベントサイト側での、来場者に合わせたアプローチももちろんですが、
イベントサイトで得たデータをもっと営業活動でも活用できるようにしたいとも思っています。

例えば、「この参加者さんは、コンテンツAを見てその次に関連コンテンツBのページまで来訪しているが、内容を確認する前に離脱している。ということは、Bの資料を送ってあげると良いかもしれない」というように、“営業の次の一手“までが分かるようなデータの取り方や、ダッシュボードの作り方をしたい、とも思っています。

イベントプラットフォームEXPOLINEについて

スプラシア)
ありがとうございます。
ここまで、御社のお話をお聞かせいただきましたが、今回のプロジェクトの進行について質問させてください。

当社のグループ会社である、博展がOIW/OPFの全体を統括し、その下でスプラシアがオンラインイベントのWebサイト制作を担当させていただきました。
スプラシアのプロジェクト進行についていかがだったでしょうか?

OKI様)
イベント進行やプロモーションについて理解している方に、オンラインイベントのサイトおよびシステムの制作を任せることができたのが非常に良かったと思っています。

単に、Webサイトやシステムを作るだけならば他のWeb制作会社でも可能ですが、制作会社の方と我々イベント担当では、使う用語やタスク管理の方法や目的意識などが異なるため、会話が成り立たないことが起こりえます。

例えば、「イベントでこの目的を達成したいからこんな仕組みをつくりたい」と言ったときも、彼らからの返答は、こちらが想定したアプローチでないことが多く、もう一度別の言い方をしての他のメンバーに伝える必要があるなど、イベント制作における共通言語で会話ができるかどうかというのは結構重要な課題なのです。

スプラシア様は、イベントやプロモーションの制作という文脈で、オンラインイベントの制作を進めてくれるので、とても進めやすかった印象があります。

また、スプラシア様が博展様と一緒に会議の場や日々のコミュニケーションの場に出てきてくれていたので、とにかくコミュニケーションや判断が早かった、というのも大変良かったです。
「これはできるのか?」といった疑問が出た場合も、その場でスプラシア様のディレクターに実現の可否や代替案などをお答えいただけていたため、
社内へ持ち帰り検討する時間を確保でき、結果イベントのクオリティ向上につながったと感じています。

スプラシア)
ありがとうございます。
当社のイベントプラットフォーム『EXPOLINE』については、いかがだったでしょうか?

OKI様)
「現場の営業が活躍できるイベントサイト」を作り上げることができたため、イベントプラットフォームに関しては満足しております。

そもそも、当社がこのようなイベントを行う目的としては、
普段の営業活動でカバーできない部分をイベントで補い、より良い営業活動につなげていきたい、という意図が大きいです。

Saas型のイベントプラットフォームだと、欲しい機能があったとしても、他の欲しいところを満たせていなかったり、UIも自由度がなかったりすることが多いですが、
当社の営業視点から、他製品では満たせない機能やサイトデザインをカスタマイズできる、という点で『EXPOLINE』は良かったと感じています。

OKIイベント担当者様の考える“オンラインイベント”とは?

スプラシア)
ありがとうございます。

最後に、OPFではなく“オンラインイベント“全体に関して質問させてください。
3回のオンラインイベントを通して見えてきた、今後のオンラインイベントの展望を教えていただいてもよろしいでしょうか?

OKI様)
そうですね、
今後のオンラインイベントは「前年までのやり方を踏襲し改善していく」という進め方だと、成功しないな、ということをとても感じています。

コロナ禍前の、リアル会場でのイベントですと、「今年の展示はこれが人気で、あれの改善が必要だった。来年はそうしよう」という改善型の進め方で問題なく結果を出せていたと思うのですが、世の中の動きが加速している今、展示や講演といったイベントのコンテンツをより良いものを作っていくのは当たり前に行いつつ、イベントの建付け自体を、根本からその年に合わせて最適化していく必要があると思っています。

当社としては、お客さまや社員の健康面を第一と考え、
今後とも、お客さまを大事に考えたイベントの在り方で、時流にあったコンテンツをお答えするようにしていきたいですね。

スプラシア)
ご回答いただきありがとうございます。
今後とも、当グループ一同を持って、御社に最適な方法をご提案していければと存じます。

本日は、お時間をいただき誠にありがとうございました。
沖電気工業株式会社の皆様


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